動画制作の失敗は、「違う」「不自然」「もう一度」という評価だけになりやすい。数日後に再開すると、同じ問題をまた最初から見分けることになる。
この事例集で残すのは、何秒で、どの条件が崩れ、次に何を最小限変えればよいかである。七つの分類は、プロジェクトの制作・研究記録から2026年7月27日に整理された。すべてのモデルに共通する限界でも、万能な指示文の一覧でもない。
原因より先に症状を書く
「二人が接触していない」は映像で確認できる観察だ。「モデルが空間関係を維持していない」はその説明である。二つを混ぜると、モデルやカットを変えた後も、以前の解釈を確定した事実として扱ってしまう。
各項目には、何が起きたか、現時点の説明、追加で必要な検証を分けて残す。一変数の比較をしていなければ、特定の単語が原因だとは書かない。生成完了の報告も、作品の合格判定とは分ける。
分けて残したい七つの失敗
| 分類 | 見える症状 | 次に行う小さな検証 |
|---|---|---|
| 接触と衝突 | 武器が届く前に被弾反応が出る、着地後も足が浮く | 接近、接触フレーム、反応を短い区間で試す |
| 複数参照の混線 | 相手の兜を受け継ぐ、多面図が複数人になる | 入力を減らし、各画像の担当を明記する |
| 回避の先走りと停止 | 攻撃前に避ける、接近後に理由なく止まる | 予備動作、確定動作、重心移動、復帰の順序を定める |
| カメラ指定の不足 | 人物だけ動く、前進がズームになる | 始点、経路、遮蔽、終点を書き、視差を見る |
| 全体描き直しと画風変化 | 兜の修正で顔、材質、画風まで変わる | 承認済み原版へ戻り、一領域だけ直す |
| 生成側の自己点検の失敗 | 合格報告があるのに動作、同一性、同期が違う | 最終ファイルを独立して確認する |
| 解説図形の不具合 | 縦画面の題がはみ出す、曲線、ラベル、初期フレームが違う | 配置幅、幾何、書き出したフレームを確認する |
分類ごとに対処は違う。接触距離が違うときに「もっと映画的に」と足しても、検証可能な修正目標にはならない。数学の曲線が違えば、雰囲気のよさでは補えない。
動作には前後関係がある
失敗するのは一つの姿勢ではなく、順番の場合がある。回避らしく見えても、まだ脅威が始まっていない。攻撃者が近づいたのに、一度止まってから振る。「早く避けるな」だけでは、今度は棒立ちになることもある。
短い検証では、移動を続ける、予備動作が見える、攻撃が確定する、その後に回避して戻る、という連続を記述する。攻撃も最後の接近、踏み込み、回転、打撃、振り抜きで確認する。自然な呼吸まで消し、すべての間を失敗扱いしない。
接触の限界を扱った記録は、画面が本当に「当たった」と示しているかを問う。音、破片、反応で出来事は伝えられても、課題が要求する接触の幾何までは修復できない。精密な衝突が必須なら、カット構成を変えるか、状態を制御できるエンジンの工程を考える。
参照画像ごとの役割を決める
複数画像を渡す前に、同一性、服装、姿勢、場面、材質のどれを担当するか決める。二枚が外見を同時に決めようとすれば、特徴が混ざっても不思議ではない。
このプロジェクトでは、少数で役割の明確な参照から始めた。顔と全身の制約が違うなら分けて扱う。多面図は人の理解に役立っても、動画入力にそのまま適するとは限らない。配置自体が複数の人物として読まれることがある。
複数人の画面では、個別に確認した後、合成した大きさ、視線、位置関係も見る。単体で合格した二人が、同じ画面でも合格とは限らない。
局所修正には戻り先を用意する
兜を直しただけで絵画的な画面が樹脂のようなCGへ変わったら、修正範囲を超えている。その版で補修を続けると、承認した顔や材質が遠ざかる。
承認済み原版を残し、変更可能な領域と不変条件を決め、顔、輪郭、材質の細かさ、照明を比較する。一つの関節列を直すなら、まずそこだけを扱う。
事例集には二つの作業予算を設けた。同種の接触失敗が三回続けばカットを再設計し、局所修正で新たな同一性や全体画風の問題が二回続けば原版へ戻る。これはプロジェクトの停止条件であり、モデルの成功率を測った数値ではない。
解説動画では正しさも点検する
横画面を縦へ縮めるだけでは、題が収まらないことがある。顔に変形がなくても字幕に隠れる。精巧な曲線でも、平行移動のはずが傾きの変化になっていることがある。
こうした図は、確認可能なSVG、HTML、コードで描くことを優先する。文字幅、顔を避ける領域、座標、ラベル配置を明示的に計算する。ブラウザで正しく見えた後も、最終書き出しの最初の一枚、遷移、重要な図解フレームを確認する。時間軸の初期状態から閃光が残る場合があるからだ。
各リスクに対応する確認箇所を持つ。カメラなら視差、接触なら距離と時刻、図解なら幾何と文字、音画なら同期を見る。
次に使える一件の記録
再利用できる記録には、最低限これを残す。
- 目標と変えてはいけない条件。
- モデルと版、参照の役割、指示原文。
- 元の出力、時刻、必要な抽出フレーム。
- 実際の観察と、原因の仮説を別々に。
- 一つだけ変えた点、改善の有無、停止条件。
失敗記録の価値は、次の手探りを減らすことにある。「別の指示を試す」しか残らなければ、役立つ判断はまだ保存できていない。