費用曲線:限界・平均・長期包絡線が示すもの

ミクロ基礎05 / ノート

短期の費用曲線群、限界費用が平均費用の最小点を通る理由、そして長期平均費用が企業の選べる各設備規模の包絡線になる仕組みを整理する基礎ノート。

基礎ノート——分析の構成要素を鈍らせないために。

短期には固定的な生産要素があるため、企業の総費用は二つに分けられる。

TC = FC + VC(Q)

固定費用 FC は生産量に左右されない費用(たとえば設備の賃料)であり、可変費用 VC(Q) は生産量とともに変化する。生産量がゼロなら TC = FC である。ここから費用曲線の一式が得られる。

AFC = FC/Q,   AVC = VC/Q,   AC = TC/Q = AFC + AVC,   MC = dTC/dQ = dVC/dQ

重要なのは次の二点である。

  • 限界費用は可変費用だけで決まる。 固定費用や埋没費用は限界的な意思決定に入らない。単位当たりの判断を間接費に引きずらせないための基本である。
  • 平均固定費用 AFC は単調に低下する。 したがって ACAVC の差は AFC に等しく、生産量が増えるほどその差は縮まる。

なぜ MC は平均費用の最小点を通るのか。 限界値が平均値を下回れば平均は下がり、上回れば平均は上がる。そのため MC 曲線は AVCAC のそれぞれの最小点を正確に通る。AVCAC より先に底を打つため、MC はまず左側にある AVC の最小点と交わる。

長期平均費用は包絡線である。 長期にはすべての投入要素を変えられ、企業は各生産量について最適な設備規模を選べる。したがって長期平均費用 LRAC は、短期平均費用 AC の曲線群の下側包絡線になる。各生産量で最も安い短期曲線を選び、その点で接する。これは短期平均費用の最小点を結んだ線ではなく、短期曲線との接点からなる曲線である。

規模。 LRAC が低下する区間は規模の経済を示す。専門化、固定費用の分散、大口調達などが背景にある。反対に、組織が大きくなることによる調整費用で LRAC が上昇するなら規模の不経済である。U字型の LRAC の底は最小効率規模と呼ばれる。これは費用についての概念であり、生産量についての規模に関する収穫と関連するが、同一ではない。

よくある誤りは、微分である MC と比率である AVC を混同すること、固定費用や埋没費用を限界計算に入れること、そして LRAC を短期費用曲線の最小点を通る線として描くことである。