独占:単一の売り手が生む価格と限界費用の乖離

ミクロ基礎07 / ノート

限界収入が価格を下回る理由、数量を決めてから価格を読む二段階の最適化、ラーナー指数、競争市場と比べた死荷重を整理する基礎ノート。

基礎ノート——分析の構成要素を鈍らせないために。

独占企業は唯一の売り手であり、市場全体の右下がりの需要曲線に直面する。この一点から主要な性質が導かれる。もう一単位売るには価格を下げなければならず、その値下げは限界的な一単位だけでなく、販売するすべての単位に及ぶ。したがって限界収入は価格を下回る

MR = P·(1 + 1/ε) < P

ここで ε < 0 は需要の価格弾力性である。需要曲線が線形なら、MR 曲線の傾きは需要曲線の二倍になる。

最適化は二段階で行う。 利潤最大化の条件は依然として MR = MC であり、まずこれによって数量 Q_m を決める。次に、その数量に対応する需要曲線上の価格を読む。つまり P_m = P(Q_m) > MC である。完全競争では P = MC まで価格が下がるが、独占では P > MC というマークアップが維持される。

マークアップの測定。 MR = MCMR = P(1 + 1/ε) を組み合わせて整理すると、次式を得る。

(P − MC)/P = −1/ε

左辺は市場支配力を示すラーナー指数である。需要の弾力性が低いほど(|ε| が小さいほど)マークアップは大きくなる。|ε| → ∞ という競争市場の極限では、マークアップは消える。この関係から、独占企業が需要曲線の弾力的な区間(|ε| > 1)でのみ操業することも分かる。非弾力的な区間では MR < 0 となり、生産を減らすだけで収入を増やせるからである。

厚生上の費用。 独占数量 Q_m は競争市場の数量を下回る。その間には、買い手の評価額(需要価格)が MC を上回るにもかかわらず生産されない単位が存在する。そこで失われる余剰が死荷重であり、競争市場を基準にした独占の効率性費用である。これとは別に、消費者余剰の一部は利潤として独占企業へ移転する。

自然独占。 強い規模の経済により、関連する生産量の全域で平均費用が低下する場合、一社が供給するほうが最も安く、競争は固定費用の重複を招く。このとき規制当局は、一般に平均費用価格設定(P = AC、利潤ゼロ)または限界費用価格設定(P = MC、効率的だが補助金が必要)を選ぶ。

よくある誤りは、独占企業が「好きな価格を付けられる」と考えること(需要曲線の制約があり、価格を上げすぎれば数量が減る)、MR = MC の高さを価格として読むこと(価格は需要曲線から読む)、そして MR < 0 となる需要の非弾力的な区間で生産すると考えることである。