基礎ノート——分析の構成要素を鈍らせないために。
完全競争は、市場を考える際の基準点である。次の四つの仮定によって定義される。
- 小規模な買い手と売り手が多数存在し、単独では価格を動かせない。
- 財は同質的で、買い手にとって誰から買うかに違いがない。
- 各企業は価格受容者であり、市場価格
Pなら任意の量を売れるが、それを上回る価格では売れない。 - 長期には参入と退出が自由で、情報が完全である。
この結果、個別企業が直面する需要曲線は P の水準で水平、すなわち完全に弾力的になる。平均収入と限界収入はいずれも価格に等しい。
AR = MR = P
企業の選択。 利潤 π = TR − TC を最大化する一階条件は MR = MC である。完全競争では、これは次の代表的な式になる。
P = MC
ただし二階条件を満たすため、MC の右上がりの部分で成立しなければならない。
短期。 資本は固定されているため、企業は価格 P を平均費用 AC と平均可変費用 AVC と比較する。
P > AC:正の経済利潤を得る。P = AC:正常利潤のみを得る。AVC ≤ P < AC:損失は出るが、生産を続ければ固定費用の一部を回収できる。P < AVC:操業を停止する。生産を続ける損失が、固定費用だけを負担する場合より大きくなるためである。
したがって操業停止点は AVC の最小点であり、企業の短期供給曲線はその点より上にある MC 曲線となる。
長期。 自由な参入と退出は超過利潤を消滅させる。正の利潤があれば新規参入で供給が増え、価格が下がる。損失があれば退出で供給が減り、価格が上がる。均衡は次の状態に落ち着く。
P = MR = MC = min AC, π = 0
各企業は平均費用曲線の底、すなわち効率的規模で生産し、経済利潤はゼロになる。また P = MC であるため、最後の一単位に対する買い手の評価とその限界費用が一致する。結果は配分効率的で、死荷重はない。この「利潤ゼロ、価格と限界費用が一致」という状態が、独占や寡占を評価する厚生上の基準になる。
よくある誤りは、経済利潤ゼロを会計利潤ゼロと読むこと(正常収益を含むため会計利潤は正でありうる)、短期の操業停止条件に AVC ではなく AC を使うこと、そして個別企業の水平な需要曲線と市場全体の右下がりの需要曲線を混同することである。