空間依存と空間的異質性は同じ問題ではない

空間手法01 / ノート

地理が回帰へ入る二つの異なる経路——近隣効果と、場所によって一定しない関係——を区別し、それがモデル選択全体をどう決めるかを整理する。

地理を回帰に入れたとき、「空間」が一つの意味しか持たないことはほとんどない。そこには異なる道具を必要とする二つの問題が隠れている。どちらを扱っているのかを名指すことが、最初の実質的なモデル選択である。ここを誤ると、その後の推論は静かに無効になる。

一つではなく、二つの現象

空間依存はデータの共分散構造の性質である。結果、またはその誤差が、近隣の単位間で相関する。Tobler の第一法則——近いものは遠いものより関係が深い——は、その非形式的な表現である。「近隣」を空間重み行列 W(隣接、距離帯、k 近傍。通常は行標準化)で符号化し、二つの標準モデルのいずれかを書く。

空間ラグ(SAR): y = ρ W y + X β + ε
空間誤差(SEM): y = X β + u,  u = λ W u + ε

ラグモデルでは結果そのものが波及する。自地域の値が近隣の値に反応し、ρ がその強さを測る。y が両辺にあるため、どこかのショックは誘導形 y = (I − ρW)⁻¹(Xβ + ε) を通じて全体へ伝わる。したがって共変量の効果は直接効果間接(波及)効果に分かれ、単純な β はもはや限界効果ではない。誤差モデルでは、波及は λ が捉える、欠落した空間構造要因の中にある。この場合、β は OLS の下でも一致するが、標準誤差が誤り、推論が歪む。

要点は、どちらでも関係自体は大域的だということだ。一組の β が地図全体を記述する。空間はパラメータではなく、共分散構造に存在する。

空間的異質性は逆であり、パラメータそのものが場所によって動く。

y_i = β₀(u_i, v_i) + Σ_k β_k(u_i, v_i) · x_ki + ε_i

(u_i, v_i) は観測 i の座標である。地理的加重回帰(GWR)は各地点でカーネル加重回帰を別々に推定し、AICc または交差検証で帯域幅を選ぶ。結果は地点ごとの β から成る局所係数のである。「X の効果」は一つではなく、ここでの効果と、あそこでの効果がある。空間は共分散だけでなく、パラメータに宿る。

両者を見分ける

  1. 大域的な OLS を推定し、残差を見る。
  2. 残差の Moran’s I で、残された空間構造を検定する。
I = (n / S₀) · (eᵀ W e) / (eᵀ e)

有意な I は「空間が残っている」と知らせるだけで、種類までは示さない。依存も、モデル化されていない異質性も、自己相関した残差を生む。Moran’s I は煙探知器であって、診断名ではない。 3. 依存を識別するには、LM(ラグランジュ乗数)検定とその頑健版(Anselin の決定規則)を用いる。頑健 LM-error と頑健 LM-lag が SEM または SAR の方向を示す。 4. 異質性には別の問いが必要である。大域モデルの不適合が地域全体に系統的に現れているか。空間レジーム/Chow 型検定、GWR による AICc の改善、斑状の局所 R² 面などが手掛かりになる。

この区別が単なる用語問題ではない理由

  • 本当に変化する関係を一つのラグ項で処理すると、不適合が ρ に吸収され、どの場所でも正しくない平均係数を報告することになる。
  • 近隣相関した誤差にすぎない問題へ GWR を使うと、係数がノイズを吸収するために動き回り、推定上の人工物を「異質性」の面として過剰適合する。

両者は同時にも起こる。関係が空間的に変わり、なお近隣相関した誤差を残すこともある。その場合は、空間頑健推論を伴う GWR、空間可変係数モデル、または共変量ごとに異なる空間尺度を許す MGWR など、両方への対応が必要になる。

一行で判別する

近隣のが自分の値へ流れ込んでいるのか。それとも地図上を移動すると Xy を結ぶ規則が変わるのか。前者は共分散の問題(空間依存)、後者はパラメータの問題(空間的異質性)である。どちらが当てはまるかによって、モデル化の連鎖全体が決まる。