個人開発において、美術制作は大きな制約になりやすい。ゲームへ石巨人のボスを追加するため、当初はMidjourneyに近い汎用画像生成モデルから直接素材を作ろうとした。しかし、結果をゲーム内へ置くと整合しなかった。本稿では、その失敗から使用可能な制作工程へ至るまでを記録する。
1.限界の確認:汎用画像生成ではゲーム用ピクセル敵を直接作れない
最初の石巨人は汎用画像生成モデルから出力した。単体では大きな問題がないように見えたが、ゲーム内で手描きのピクセル敵と並べると、不整合が明確になった。生成画像は高解像度で、細部が多く、輪郭が柔らかい。一方、ゲーム側は低解像度の塊と硬いピクセル境界で構成される。両者はピクセル密度そのものが異なっていた。
これはプロンプトだけで修正できる問題ではなく、生成媒体の限界である。結論は明確だった。汎用画像生成はコンセプト画像や宣伝用画像には使えるが、ゲーム内のピクセル素材そのものには適さない。実装用の敵には、既存のピクセル素材を使うか、ピクセル専用ツールを選ぶ必要がある。今回は、生成とアニメーションの双方に対応するPixelLabを採用した。
2.出力工程:ゲームの画風を基準にする
最も重要だったのは、ゲーム内で使用中の敵を画風参照として与えることである。購入素材の岩石系モンスターを基準にすると、PixelLabはそのブロック密度、配色、輪郭処理を参照しながら新しい巨人を生成できた。これにより、結果を同じ視覚体系へ収められた。
直感に反する点は、合わせるべき対象が寸法ではなく密度だということである。ゲーム内の敵素材は実際には小さく、内容部分はおよそ60ピクセル程度しかない。それを描画時に拡大している。したがって最大出力を選ぶとピクセルが細かくなり、再び高精細な不整合へ戻ってしまう。中程度の出力サイズが適切だった。
出力時に生じた問題
- 参照画像の姿勢は欠点まで再現される:コンセプト画像の姿勢を参照させたところ、岩の後ろに隠れていた片脚まで「存在しないもの」として処理された。参照画像は造形と設計言語だけに使い、具体的な姿勢は写させない方がよい。
- 影の参照から色が混入する:黒い玄武岩を求め、配色コピーを無効にしても緑色が残った。影処理の参照が元画像の緑を運んでいたためである。
dark basalt / black rockのように素材と色を文章で明示し、参照色より強い制約を与えた。
3.アニメーション工程:作業の中心となった部分
一枚の静止画を作ることより、それを連続した動作へ変換する方が難しかった。主な問題は次の通りである。
- ツールの版を誤るとフレーム数が固定される:同名に近い二つの版があり、「Pro」版は一回につき4フレームへ固定されていた。遅く重いボスには不足する。一方、「NEW」版には最大16フレームまで指定できる設定があった。使用する版の選択が、動作の成立条件になった。
- 腕を上げるとキャンバス外へ出る:頭上から振り下ろす攻撃では、腕を上げた時点で画面外へ切れてしまった。生成前にキャラクターを下方へ配置し、頭上の余白を十分に確保する必要がある。
- 最大の問題は、モデルが開始姿勢へ戻ろうとする性質だった。文章からアニメーションを作るモデルは、終端と始端がつながるループを生成しやすい。最初の叩きつけ攻撃は、腕を上げ、長く停止し、そのまま待機姿勢へ戻るだけで、地面へ到達しなかった。攻撃はループではなく、衝突姿勢で終わるべきである。そこで条件を三点に限定した。身体の前方へ打ち下ろすこと、終端では低く構えて両拳を地面へ置くこと、そしてその姿勢のまま立ち戻らないことである。これによって初めて重量のある動作になった。
ほかにも、次の制約が必要だった。
- ループの継ぎ目:呼吸のような対称動作は、
0→N→0の往復順で自然につなげられる。進行方向を持つ歩行は単純な逆再生ができないため、一歩を完了して開始状態へ戻るよう再生成するか、ループ可能な区間だけを切り出す。 - 2D側面視点では身体を回転させない:「腰をひねって振り向く」といった指示は、身体全体の3D回転として解釈され、側面シルエットを崩すことがある。横薙ぎは特に難しく、垂直または前方への攻撃の方が安定する。
- 自動プロンプト補正は攻撃指示を弱める場合がある:「回転する」「元の姿勢へ戻る」といった指示を再挿入するため、適用後に削除する必要がある。
- 重量のある敵は大きく後退させない:石巨人の被弾反応は、後方へ大きく移動するより、接地したまま上体を縮める程度が適切である。
4.完成形:叩きつけ、咆哮し、崩壊する巨人
修正を重ねた結果、待機、歩行、頭上叩きつけ、溜め回転、咆哮、被弾、崩壊死亡の七動作が揃った。いずれもブロック状の構成、暗い色調、ゲーム内素材と同じピクセル処理を維持している。
回転範囲攻撃の炎は新しく生成しなかった。以前購入した素材パックに、用途へ適合する暗色の炎リングが含まれていたためである。橙赤色へ調整し、石巨人の周囲へフレーム単位で重ねることで必要な効果になった。既存素材が問題を解決できるなら、制作工程の一部として再利用すべきである。
5.まとめ
AI支援によるピクセルボス制作は、三つの条件を満たせば実用になる。汎用画像生成ではなくピクセル素材向けのツールを使うこと、ゲーム自身の素材を画風基準にすること、そして十分な人間主導の反復修正を前提とすることである。この石巨人は約二十回の修正を経ており、その都度、人がゲームに適合しているかを判断した。
モデルは制作量を担うが、判断の責任は開発者に残る。これが、個人開発におけるAI協働の実際的な分担である。