残差 Moran’s I が帰無仮説を棄却すると、空間依存の存在は分かるが、その形式までは分からない。空間誤差と空間ラグのどちらを推定すべきかは示さない。ラグランジュ乗数(LM)検定はまさにその選択のために作られ、しかも OLS 残差だけで実行できる。空間モデルを先に推定する必要はない。
二つの検定が、それぞれ一つの対立仮説を狙う。
- LM-error——
H₁:誤差が空間自己相関する。空間誤差モデル(パラメータλ)に対応する。 - LM-lag——
H₁:従属変数の空間ラグがある。空間ラグモデル(パラメータρ)に対応する。
帰無仮説の下で、いずれも χ²₁ に従う。問題は、真にラグがあるとき LM-error が不変ではなく、その逆も同じため、実際には一形式だけでも標準検定が二つとも棄却しうることだ。解決策が頑健 LMである。各検定をもう一方の形式が存在する可能性について補正し、一方を他方から切り離す。標準検定が競合するとき、頑健統計量が決定的な証拠になる。
標準的な手順(Anselin et al., 1996; Florax et al., 2003)は次の通りである。
1. OLS を推定。残差 Moran's I が有意でない? → OLS を維持。
2. それ以外は LM-lag と LM-error を確認:
LM-lag のみ有意 → 空間ラグ(SLM)
LM-error のみ有意 → 空間誤差(SEM)
両方有意 → 手順 3
3. 頑健統計量を比較:
頑健 LM-lag 有意、頑健 LM-error 非有意 → SLM
頑健 LM-error 有意、頑健 LM-lag 非有意 → SEM
両方の頑健検定が有意 → 両方を推定し、複合型の
SARAR または Durbin モデルを検討して報告
注意点は二つある。第一に、すべての統計量は固定された重み行列 W の下で計算される。近隣定義を変えると結論も動きうるため、別の妥当な W でも決定規則を繰り返す。第二に、空間モデルは正しい平均構造の代替ではない。空間依存が、たまたま空間的に集積した欠落変数に由来するなら、誠実な修正はその変数を加えることであり、空間パラメータで誤特定を覆うことではない。モデル自体が適切だと確かめた後にだけ、依存をどう表すかの選択へ進むべきである。