二つの標準空間モデルと、それらを包含するモデル

空間手法04 / ノート

空間誤差、空間ラグ、両者を含む Durbin モデルについて、依存の所在、波及の有無、係数が限界効果でなくなる理由を整理する。

診断によって空間依存が確認された後、依存がどこにあるのかを選ばなければならない。標準的な答えは二つあり、さらに両方を含む一般モデルがある。

空間誤差モデル(SEM)。 依存を攪乱項へ置く。

y = Xβ + u,   u = λWu + ε

系統部分 は通常のままで、誤差が空間相関する。多くの場合、境界を越えて広がる未観測の地域特性のような、欠落した空間構造要因が原因である。λ は近隣の残差が共に動く強さを測る。重要なのは、X から y への限界効果が依然として β であり、結果の波及はないことだ。SEM は OLS の誤った標準誤差を直す攪乱の補正であり、経済的な物語を変えない。λ を「近隣の結果が自分の結果へ影響する」と読んではならない。

空間ラグ/自己回帰モデル(SLM/SAR)。 依存を結果へ置く。

y = ρWy + Xβ + ε

各単位の y が近隣の y に依存し、参照価格、模倣、混雑など実際の相互作用や拡散を表す。二つの帰結がある。第一に、Wy は構造上 ε と相関するため、OLS は有偏かつ不一致である。最尤法、または WXW²X を操作変数とする IV/GMM で推定する。第二に、ショックが空間乗数 (I − ρW)⁻¹ を通じてフィードバックするため、β限界効果ではない。影響を直接効果(自己地域とフィードバック)、間接効果(他地域への波及)、総効果に分解しなければならない。

両者を包含する空間 Durbin モデル(SDM)。 近隣の共変量も加える。

y = ρWy + WXθ + Xβ + ε

SDM は近隣の結果と属性の双方を許し、含まれる変数と空間相関する欠落変数に対して頑健である。他のモデルを包含し、θ = 0 なら SLM、「共通因子」制約 θ = −ρβ なら SEM、ρ = 0 なら空間ラグ X のみになる。そのため一般的な SDM から始め、検定によって単純な形へ縮約する戦略がよく用いられる。

一貫する原則は、推定前に依存の所在を明示することだ。誤差モデルでは係数の通常の意味が保たれ、波及はない。ラグまたは Durbin モデルでは波及があり、Wy は内生的で、「係数」は影響分解に置き換わる。ここを誤ると効率だけでなく、数値の意味そのものが変わる。