工場には固定費があるので、運賃が高いと両方に1つずつ建てる。運賃が下がると1つで両方に供給でき、工場と仕事が大きい方へ一気に集まる。
映像は直感をつかむためのもので、数値の出典と適用範囲は本文を基準とする。縦型版の英語・日本語字幕版は今後の予定。
交通が便利になるほど、小さな地域はかえって空くのか。研究にはそうした結果がある。新幹線の途中駅がある小さな町は、数十年で全国の雇用に占める割合が相対的に約3割下がった。中国で国道に沿ってつながった県は、つながらなかった県より工業の伸びが約26%小さかった。
工場の収支から理由がわかる。同じ大きさの東西二つの町がそれぞれ5単位を買う。工場を1つ建てるのに4かかり、工場は大きいほど得である(収穫逓増)。
- 道が悪く、向こう側へ1単位運ぶのに2かかるとき。1つだけ建てると5単位を運んで10、建設費4で計14。両方に建てれば4+4=8。だから両方に工場がある。
- 道が良くなり、1単位0.5になったとき。1つだけなら運賃2.5+4=6.5で、2つの8より安いので1つを閉める。工場は1.5個は建てられないので、2つが一気に1つになる。
- 運賃が高いことが、かえって小さな町の工場を守っていた。道が通じると、隣の大都市の工場がそこへ売りに来る。両側は少しずつ違うので工場は少し大きい方に残り、労働者もついていき、大きい方がさらに大きくなる。これが中心・周辺モデル(Krugman 1991)である。新幹線が運ぶのは人だが、出張の時間と切符代も商売の輸送費である。
反対の証拠もある。中国で高速鉄道の駅がある地級市は、ない市より雇用が平均約7%多い。本州四国連絡橋の開通では、広島・岡山のような大都市が最も得をした。研究で減っているのは主に工場と仕事で、戸籍人口は必ずしも減っていない。大都市に近い小さな地域が最も損をするというのは複数の研究からの私たちの要約で、証拠は完全には一致しない。
日本語の授業版(横型)
講義のペースに合わせた日本語の横型版。上下2本に分け、導出・数値例・確認問題まで扱う。
出典: Faber (2014);Koster, Tabuchi and Thisse (2022);Lin (2017);Krugman (1991);数値例は Krugman『Geography and Trade』第1講の簡単なモデルに基づく説明用の数字。