1988年、カナダの州どうしの取引は、同じ規模・同じ距離の米国の州との取引の約22倍と推定された。国境は追加の輸送費のように働く。
映像は直感をつかむためのもので、数値の出典と適用範囲は本文を基準とする。縦型版の英語・日本語字幕版は今後の予定。
地図の上の国境は細い線にすぎない。取引の上ではどれくらい厚いのか。McCallum(1995)は1988年のデータで、カナダの州が他の州と行う取引は、同じ規模・同じ距離の米国の州との取引の22倍と推定した。当時、両国の関税はすでに低かった。
- 小国側で厚い。 Anderson and van Wincoop が従来の推定で抜けていた部分を補うと、国境はカナダの国内取引を約6倍にする一方、米国の国内取引は約4分の1増やすだけと推定された。カナダは小さく、取引相手の多くが国境の向こうにあるので、国境はカナダにとってより厚い。
- 実際に現れた国境。 戦後、東西ドイツの境界は封鎖が強まり、境界に近い西ドイツの都市は他の西ドイツ都市に比べ、40年近くで人口が相対的に約4分の1少なくなった(Redding and Sturm 2008。難民の移動が主因とする研究もあり、議論がある)。1990年の統一後、検問はすぐになくなったが、旧境界をまたぐ取引は少ないままで、影が消えるには30〜40年以上かかると推定されている(Nitsch and Wolf 2013)。
- 開いた国境。 冷戦終結後、東部国境から25キロ以内のオーストリアの町では賃金と雇用の伸びが大きかった(Brülhart, Carrère and Trionfetti 2012)。
- なぜ厚いのか。 国境は追加の輸送費のように働く。関税はその一部にすぎず、両替、言語、制度、人脈の手間が加わる。この費用が高いと、両側がそれぞれ自前の工場を持つ。
- 日本と中国。 日本に陸の国境はないが、東日本と西日本の間の取引は各内部より2〜5割少なく、県と県の間にはそのような壁は見られない(Wrona 2018)。香港と本土の境界を約266キロの距離、広東と上海の省境をわずか約1.3キロに換算した研究もある(Fan, Wei and Wu 2016)。
カナダ統計局は米加国境を約3割の関税に相当すると推定し、これを1割に下げるシミュレーションでは、カナダの対米輸出が約8割増え、州間取引は半減し、カナダの支出は1割余り、米国は1%未満増える。小国側の痛みが大きく、国境がなくなっても影は長く残る。日本語の授業版では、国境が比較優位の利益を消してしまう数値例と国境効果の推定式も扱う。
日本語の授業版(横型)
講義のペースに合わせた日本語の横型版。上下2本に分け、導出・数値例・確認問題まで扱う。
出典: McCallum (1995);Anderson and van Wincoop (2003; NBER WP 8079);Redding and Sturm (2008);Nitsch and Wolf (2013);Brülhart, Carrère and Trionfetti (2012);Wrona (2018);Fan, Wei and Wu (2016);カナダ統計局 Economic Insights No.096 (2019)。