vibe構築(画面上の題名は「vibe构筑」)は3Dショートのシリーズで、各作品が扱うのはひとつのものだけである。部品がビートに合わせて一つずつ収まり、組み上がると、そのものが動き出す。唐代の木造仏殿の斗栱に始まり、ブロー成形機まで全15点。レンダラー、音楽、チェック用ツールはClaude Codeが書き、私は題材選び、試写、最終判断を担当した。文中の「指摘」は、どれも私が試写のあとに出した意見である。
状態:15本(9:16)に加え、#03の横型が1本(16:9)。最初の1本は2026-10-24、最新の1本は2026-10-31に完成した。
ここに置いたのは720pに圧縮したウェブ版である。画面の文字は中国語のみで、ナレーションも翻訳版もない。以下に引用する画面上の言葉はここで訳したものである。逆方向の姉妹シリーズは『vibe解構』を参照。
1話の構成
各話は同じ順序で進む。
- 冒頭の事実。
- 分解図とタイトル。
- 章ごとの組み立て:ラベル付きの部品が強拍に収まる。
- 1〜2か所の解説。X線や断面を使うことが多い。
- 動き出す。ここが全編のクライマックスである。
- エンドカード:タイトルと次回予告(#15には予告がない)。
長さは内容に合わせた。最初の2本は48秒、それ以降は72秒から98秒である。マスターは縦型1080 × 1920、30fpsで、結末が冒頭につながるのでループ再生できる。
作り方
各作品は1枚のウェブページで、どのフレームの絵も時刻だけで決まる。ヘッドレスブラウザで1フレームずつキャプチャし、ffmpegでエンコードする。ここまでは以前の解説ショートと同じである。違いは映像で、ここでの3Dは自作のWebGL2 SDFレイマーチングレンダラーで計算し、外部ライブラリを使わず、モデル、画像、フォントもダウンロードしない。文字はこのマシンにインストール済みのフォントを使う。
音楽は作品ごとに書き、サンプルを使わずコードで合成する。部品が収まる音はその瞬間のコードに合わせて調律し、映像の強拍は音楽のキューシートに沿ってフレーム単位で揃える。画風と音楽のジャンルは作品ごとに変え、重複させない。
対象は汎用的な造形で、特定の製品を複製せず、ブランドやロゴも出さない。説明すべき例外が二つある。#01の仏殿は仏光寺東大殿(857年)を手本にしているが実測に基づく復元ではなく、#03のレンズ構成は実在するレンズの公表データに基づく。
測れることと判断によることは分けて考える。画面の文字には話ごとに確認した表現だけを使った。確認はClaude Codeが公開資料にあたって行ったもので、第三者の査読はない。したがって作中の数値は引用であり、私の実測ではない。「典型値の推定」「フル負荷時の理論値」と表示したものは推定である。強拍のフレームで絵が変化するか、ループのつなぎ目、ちらつき、文字がスマートフォンの安全領域に収まるかはチェック用ツールで確認する。良いかどうかは私が判断する。
1本の本番レンダリングは、短いもので十数分、長いもので3時間以上かかる。#01は約18分、#13の第1版は約3時間20分だった。
15本
エンドカードで予告する次回作は、もう一方のシリーズにあることもある。
01 斗栱
深い青の地に線画の図面。収まりつつある部品だけが琥珀色に光り、近景では不透明な白いモデルに切り替わる。音楽はニ長調の五音音階による軽いグルーヴで、カリンバと笛が主旋律を担う。解説は「斗と肘木は仕口で噛み合い、釘に頼らない」。最後は走査線が線画を実体の仏殿に変える。
02 メカニカルキーボード
明るい製品発表風のスタジオ撮影、アルミのケースとマットなキーキャップ。唯一の差し色はオレンジのEsc一つである。音楽はイ短調のlo-fi houseで、キーキャップの音をドラムにしている。冒頭は「87キーのメカニカルキーボードには、87本のばねが隠れている」。X線の解説は「約2ミリ押すと接点がつながる」。最後はキーボードがひとりでに文字を打ち、一打ちごとに旋律の一音になる。
03 カメラ
暗室の赤いセーフライトとフィルムの枠。音楽はホ短調のシネマティックなミニマルで、弦楽とピアノによる。見どころはシャッターとレンズで、「1/180秒より速いと、2枚の幕がスリットになって走る」「13枚のレンズ、8群構成」と語る。最後にシャッターを切ると、写るのはこの作品の冒頭の画面で、印画紙のように現像されていく。
横型は後から別に作った。この1本には縦の画面が窮屈だと感じたからである。音楽と長さは変えず、32のカットを組み直した。
04 直列6気筒エンジン
真っ黒な自動車広告のスタジオで、長い帯状のライトの反射が金属の上を走る。全編で赤いのはバルブカバーだけである。音楽はヘ短調のダークなエレクトロニック。解説はバランスで、「6つのクランクスローは3組、互いに120°ずつ離れる」「前3気筒と後3気筒は鏡写しで、生まれつきバランスが取れている」と語る。0:54以降の稼働シーンは作り直した第2版である。理由と硬貨についての説明は本文の末尾にある。
05 二軸押出機
ベージュの紙に描いた技術断面イラストで、溶融樹脂だけが暖色である。音楽は172 BPMのdrum & bassで、組み立ての間はハーフタイム、稼働して初めて全速になる。解説は「2本のスクリューは同じ向きに回り、互いをかき取ってセルフクリーニングする」と「ずらし角が大きいほど、送りは弱く、練りは強くなる」。最後はストランドがペレットに切られ、ペレットが#05の形に並ぶ。
06 機械式時計
ミッドナイトブルーの背景でのマクロ撮影。ペルラージュ、コート・ド・ジュネーブ、焼き入れの青ねじ、ルビーの軸受。音楽はロ短調のネオバロック室内楽である。「毎秒8振動、ちょうど120 BPMの16分音符」なので、時計の刻みが音楽のグリッドにそのまま乗る。最後に針は10時10分で止まる。
07 グランドピアノ
コンサートホールの舞台に暖色のスポットライトが一つ、黒い塗装の本体と金色の鋳鉄フレーム。音楽はネオクラシカルのピアノで、ピアノ自身が主役である。解説はアクションで、「ジャックが外れると、ハンマーは慣性で弦へ飛ぶ」。1821年のダブルエスケープメントにより「鍵盤が上がりきらなくても、すぐにもう一度弾ける」。クライマックスではピアノがひとりでに主題を弾き、画面で押される鍵がそのまま聞こえる音である。
08 エスプレッソマシン
朝の光の中のカフェのカウンター、ステンレスとコーヒーの茶色。音楽は変ロ長調のボサノヴァで、タンピング、ポルタフィルターの装着、蒸気の音をコードに合わせて調律し、伴奏に加えている。解説は「抽出圧は約9バール」「湯温は約90〜96℃で、沸騰していない」「いわゆる“クレマの油分”は、主に二酸化炭素の泡である」。最後はラテアートの一杯で終わる。
09 オルゴール
深緑のベルベットと真鍮、暖かいランプが一つ。音楽は子守歌のようなchillwaveのワルツで、オルゴール自身が主旋律を担う。「ピン1本が、音ひとつ」。全編136本のピンの位置は音楽のデータから取っており、「シリンダーは、書き込まれたまま変わらないプログラム」である。最後はぜんまいがほどけ、調速機のファンが遅くなり、曲もゆっくりと止まる。
10 3×3キューブ
バウハウスのポスター風で、ベージュの紙、印刷の原色、硬い影。音楽はホ長調のmath rockで、7/8拍子と5/4拍子、回転の音を打楽器にしている。冒頭は「4325京通りの崩し方、最大でも20手」(180°回転も1手と数える)。クライマックスは「整って見えるのに、最短でも20手かかる」局面を1拍1手で解くもので、「最初の18手では、一面もそろわない」「最後の1手で、六面すべてそろう」。キューブの状態は実際にシミュレーションしており、どの手も正しい回転である。
11 水中ペレタイザー
ステンレスの機械。カッティングチャンバーを開けると、水色の世界と琥珀色の溶融樹脂がある。音楽は嬰ヘ短調のdub technoから、より推進力のあるtechnoへと徐々に進む。解説は「ダイプレートは200℃以上、接する水は数十℃しかない」(ポリエチレンの例)と「切られた直後はまだ溶融状態で、表面張力で球になる」。ストランド、ウォーターリング、水中の3方式の比較もある。
12 射出成形機
明るい工場を、ティルトシフトでミニチュアのように撮っている。音楽はニ短調のfunk / disco-houseで、1小節2秒はちょうど冒頭のキャップ金型の1サイクルである。解説はスクリューの二つの仕事で、まず回って材料を溶かし、材料に押し戻され、「そこから前へ一押し、注射器のように金型へ打ち込む」。クライマックスでは1サイクルごとに製品が変わり、これがこの作品の問題でもある。本文の末尾を参照。
13 本格水冷
開放型のパネルが炭灰色の壁に展示品のように掛かり、冷却液は不透明な氷の白で、電源を入れたときだけ青緑のエッジライトが一筋光る。音楽は変イ長調のsynth-popである。冒頭は「同じ体積なら、水は空気の3000倍以上の熱を蓄える」。結論は「どれだけ回しても、水は室温より冷たくならない」で、水冷も最後は熱を空気に渡す。
14 インターナルミキサー
夜勤の重工業の工場。鋼は冷たい灰色で、ゴムコンパウンドとそれに触れる部分だけがサーモカメラの配色になる。音楽はdrift phonkで、ラムとドロップドアの音がグルーヴに入る。解説は「熱はヒーターではなく、ローター自身の混練から生まれる」「だから加熱するどころか、ずっと冷やし続ける」。クライマックスは投入、ラム加圧、混練、排出のサイクルで、その先にコンパウンドの行き先が続く。タイヤ、靴底、シールリング、ホース、コンベヤベルトである。
15 ブロー成形機
夏の飲料広告のような青い背景で、硬い光が透明なボトルを抜け、床にコースティクスを落とす。音楽は変ホ長調のtropical houseで、排気と型締めの音を打楽器にしている。#12の続きとして、「射出成形した“試験管”を、ボトルに吹く」。解説は「まず低圧で予備ブロー、次に高圧で一気に金型へ貼りつける」「数ミリの肉厚が、吹き終わると零点数ミリになる」。エンドカードに予告はない。
指摘で何を変えたか
プラスチックのおもちゃ。最初のサンプルは写実的な質感を使ったが、私にはプラスチックのおもちゃに見えた。本物に近いからこそ、いちばん嘘っぽい。そこで#01はコードの得意な方向、つまり精密で清潔なデジタル空間へ向かった。以後の作品は、本物の質感をとことん作り込むか、はっきりしたグラフィックの画風に振り切るかのどちらかである。
光害。デジタル画風の最初の静止画に対する私の判断は「光害」だった。そこで抑えることにした。収まりつつある部品だけが光り、収まった部品は細い線に退き、背景を暗くし、色数を減らす。以後は作品ごとに画風を変えたが、この抑制は残った。
収まる音の調外れ。サンプルの音楽の第1版では、部品の収まる音と音楽の調が合わず、耳障りだった。以後は収まる音をすべてその瞬間のコードに合わせて調律し、組み立てそのものが演奏になった。
主体が背景に溶ける(#03)。暗室の色調は気に入っていたが、カメラが背景に溶けていた。細い寒色のリムライトを加え、背景に減衰をつけた。
稼働シーンが及第点どまり(#04)。組み立ては当時シリーズで最もよかったが、動き出すと、爽快感もリズムも映像も及第点どまりだった。この指摘は以後のすべての作り方を変えた。クライマックスは全編で最も見栄えのする部分にし、1小節ごとに切り替えか明確なカメラワークを入れ、マクロを入れ、最後に目に見える結果を置く。#04自身も後に0:54以降を作り直した。スターターのギア、順に点火する気筒、動弁機構とピストンのマクロ、6800 rpmまで上がる回転計、そしてバルブカバーの上に立つ硬貨である。硬貨は「生まれつきのバランス」を表すためのもので、映像上の示唆にすぎない。この回転数で立っていられるかどうかは、典拠が見つからず、実測もしていない。
製品が一瞬で過ぎる(#12)。クライマックスで製品を見分ける前に次のサイクルが始まる。作品自体は変えなかったが、規則を一つ決めた。各製品には見分けられるだけの静止を、少なくとも約1〜1.5秒置く。「1小節ごとに切り替える」は「1小節ごとに別のものに変える」ではない。#15では5種類のボトルがそれぞれ2小節、約4.27秒を占める。
ラジエーターの数え間違い(#13)。第1版は240ラジエーターを4本並べて描いたが、パネルの中央が空き、比率も合わなかった。実は、以前私が言った「4〜5」はファンの数で、ラジエーターの数ではなかった。第2版は480ラジエーター1本とファン4基に改め、パネルを部品に合わせて縮め、音楽はそのままで全編をレンダリングし直した。
平板な結末(#14)。第1版の最後の16秒は平板だった。第2版はここを作り直した。生産ラインを追うショット、新しい汎用の二軸押出機、そしてタイヤの壁の前に落ちるエンドカードである。
無音。この規則は八つの大罪から引き継いだ。普通の強拍の前では音を抜かず、音楽はそのまま強拍へ流れ込み、本当の無音は2〜3か所の大事な瞬間だけに取っておく。#10は解き始める前だけ、#14は最初の投入サイクルの前だけ、ひと息置いている。